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『星降る夜に、花束を』 第1話 「なくしもの」 その2

 ファーイースト共和国へと向かう馬車に揺られながら、ナンは今回の依頼について思い返していた。
 依頼人の名前は、クローディア。ファーイースト共和国に居を構える研究者なのだそうだ。
 なんでも自身の開発した脳解析ツールのモニターを募集しているということらしい。得体の知れない人物の作った怪しい機械の実験体になるなんてまっぴらごめんだと、ほとんどの冒険者は目もくれない。
 しかし、ナンは少し違った。
「脳解析ツール、か。これなら、私の記憶も……」
 今の生活に不満があるわけではない。千夏との暮らしは楽しい。今までは失われた過去なんて少しも気にはしなかった。
 でも――
 脳裏に浮かぶのは記憶を失った理由を尋ねたときの、千夏の悲痛な表情。
(どうして、千夏があんな顔をしたのか……私はそれが知りたいだけ……)
 過去に何があったのか。
 何かの事故に遭ったのか、それとも記憶がなくなってしまうほどの悲しくて辛い出来事があったのか。
 過去を知ることは怖い。全てを思い出すことで、今の自分が消えてしまうような錯覚さえ感じてしまう。
「なぁ、ご主人……本当にこれ受けるん?」
 すぐそばで千夏が不安そうな声をあげる。
「これ、報酬も低いし、ご主人が受けるようなクエストでもないんちゃう?」
「うん……でもちょっと気になるの」
 千夏はナンが記憶を取り戻すことをどこか恐れている様子だった。
 ナンはそんな千夏を励ますように、指でそっと千夏の頭を撫でてやった。


 ファーイースト共和国は大陸の東に位置する広大な農業国家だ。
 ここで取れた農作物はアクロポリスへと出荷され、そこを中継として世界各地へと売りに出される。豊穣な土地と謳うだけあり、自然も豊かで様々な動物たちの姿をあちこちで見かける。
 牧歌的な景色を抜け、馬車はファーイースト共和国へと到着した。
「ん~、やっぱ空気が美味しいね♪ モーグの埃っぽい空気とは大違い」
 馬車から降り立ち、ナンはウンと背伸びをすると、ぐるりと町を見回した。
「さて、依頼人の家はっと……」
 あちこちでは自分の田畑を耕す農家の姿が見える。ナンは近くにいた農家にクローディアの家を訪ねてみることにした。
「あの、クローディアさんの家ってどこにあるか教えてくれませんか?」
「んぁ? クローディア? あぁ、あの変人か。そこの丘を登った先にあるよ」
 農家が指し示したのは、離れたところに見える小高い丘だった。よく見ると、その天辺付近にかすかに家らしきものが見えている。
 ナンは農家に礼を言うと、丘を目指して歩き出した。
「実験かぁ……どんなことするんだろうね?」
「きっと変な形のヘルメット被らされて、電極とかいっぱい付けられるんやで」
「意外と催眠術みたいな奴だったりしてね」
「それじゃなんたらツールの実験にならへんやんか。それにしても、どんな人なんやろね?」
「んー、研究者って言うぐらいだから、ぼさぼさ髪で眼鏡をかけてて、白衣を着てる感じかな?」
「ベタやな~」
 そんなことを話しているうちに、ナンは丘の前へと辿り着いた。
 そして丘の前で右往左往している少女の姿に気付く。明るい草色に染め上げた布で出来た上着に、同色のふっくらと膨らんだスカート。赤いスカーフを巻いた癖っけの強い長い髪はこの地方独特の明るい茶色をしている。
 どうやらこの国に住んでいる少女のようだ。
「あれ、あの子……どうしたんだろ?」
「なんやろ? 何かそわそわしてるね」
 ナンたちが近づくと、その足音で気付いたのか、少女がハッとナンたちの方を見る。
 つんと上を向いた鼻に小さな口。垂れ気味の大きな瞳。パッと見ても分かるぐらいに少女は可愛らしい顔立ちをしていた。
「こんにちは」
 ナンは笑顔と共に少女へと声をかける。
 少女はぎこちないながらも、微笑を浮かべてぺこりと頭を下げた。
「どうかしたの?」
「え、あ、その……」
 チラリと少女は丘の上に建つ家を見上げた。
「あ、もしかして、あなたもクローディアさんに用事? 実は私たちもなんだよね。実験のモニターを引き受けたんだよ」
「あ、貴方たちが……」
 少女は小声で何かを呟くと、ナンの手をおずおずと握った。
「え、えっと、その……あたし、ミフィって言います。貴方を待っていたんです」
「え、私を?」
 ミフィに手を引かれるがまま、ナンは歩き出す。少女はどうやらクローディアの家へと向かっているらしい。
 丘を登った先には、威風堂々と構える立派な屋敷が建っていた。
 ミフィはスカートのポケットから鍵を取り出すと、それを屋敷の入り口の鍵穴へと差し込んだ。
 ガチリと鍵のかみ合う重い音が鳴り、ミフィは屋敷の扉を開けた。
「え、もしかしてミフィって……」
「……ええ、あたしはミフィ・クローディア。貴方の依頼人です」
 ミフィはそう言って、もう一度ぺこりと頭を下げたのだった。
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誕生日:6月22日
血液型:A型
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