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『星降る夜に、花束を』 第1話 「なくしもの」 その6

 夕餉はブリキングが用意してくれた。テーブルに並べられたのは、鶏肉の香草焼き、人参とキャベツのサラダ、バケット、野菜を煮込んだスープ。
「これ……本当にブリキングが作ったの?」
 湯気をたてる料理の数々を眺めて、ナンは呆れとも賞賛とも取れる声をあげた。
「なかなか器用なものだろう? ふふふ、味の方も保証するよ。さぁ、いただこうか」
 手を合わせ、大地の精霊に祈りを捧げ、ミフィが食べ始める。
 それを見てから、ナンもフォークとナイフを取り、
「うーん、ほんまに美味しそうやなぁ」
 隣で羨ましそうな声をあげる千夏へと視線を向ける。
「千夏も食べる?」
「うぅん、食べたいけど、うち物は食べられんしね。幽霊やし」
「そうだったね、ごめん」
「もぅ、うちのことは気にせんでいいから、ご主人早く食べんと冷めてまうで?」
「うん、いただきます」
「……あぁ、さっきから君は一人で何をぶつぶつ呟いているんだ?」
 席の向かいでミフィが訝しげな視線を向けてきていた。
「ご、ごめん……何でもないよ」
「ふむ、ならいい」
「ねぇ、ミフィ」
「ん、何だね?」
「ミフィはどうして発明家になろうって思ったの?」
 食事の場でのささやかな会話。そんなつもりで発した言葉だったが、ミフィはナイフとフォークを置くと、おとがいに人指し指を当て、俯いてしまう。
「動機、か。なに、子供心から来る単純なものさ。あたしは幼い頃、父の部屋にあった機械の部品でロボットを組み上げた。といっても、手足を上下に動かすだけの単純な動きしかしない手のひらサイズのロボだったがな。それを見た父親はとても驚いた顔をしてな、それからあたしの頭を撫でてくれた。お前は凄いなと褒めてくれた。それが動機だよ」
「そうなんだ……」
 今でも十分にミフィは幼く見えるが、そんな彼女が言う幼い頃とは果たして何歳ぐらいのときなのだろうか。機械類を専門に取り扱うマシンナリーというジョブがあるが、そのマシンナリーでさえロボを組み上げるには専門の知識と高い技術力が求められる。それをこんな子供が成し遂げてしまう。父親の喜びと驚きようは、さぞ大きなものだっただろう。
「それからあたしは両親に色々なことを教えてもらった。今にして思えば、あの頃が一番楽しかったのかもしれないな。あ、ブリキ、スープのおかわりをくれ」
 ミフィが皿を差し出すと、近くに控えていたブリキングが皿を回収。キッチンへと持っていった。 
「じゃあ、ミフィが一番最初に発明したものって何なの?」
「一番最初に発明したもの、か」
 そう言って、ミフィはかけている眼鏡をそっと外した。
 途端に自信に満ち溢れた表情は消え去り、丘の麓で初めてミフィと会ったとき彼女が浮かべていたおどおどとした顔が現れる。
「こ、これなんです……」
 ミフィが持ち上げたものは自分が先ほどまでかけていた眼鏡だった。
「え、もしかしてこの眼鏡をかけると性格が変わるの?」
「あ、え、えっと、そうじゃなくて……その、これは暗示なんです」
「暗示?」
 ミフィは再び眼鏡をかけ、自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。 
「そう、これは暗示なんだよ。あたしをあたしとして定義してくれる眼鏡とでも言おうか。あたしがなりたかった本当のあたしへと変身させてくれるのさ」
「じゃあ、眼鏡を外してるときが本来のミフィなの?」
「……まぁ、そうなるな」
 ミフィはスープに浸していたバケットを口へ放り込むと、窓の外へと視線を向ける。
 ナンも釣られて外の世界を見る。
 日は沈もうとしており、雲ひとつない紫色の空にはちらちらと星が顔を覗かせようとしていた。
「……ミフィは寂しくないの?」
「寂しい、か。一人でいる時間が長すぎたせいかな、もうそれがどういうものか分からなくなってしまったよ」
「そう、なんだ……」
 だから、ミフィは眼鏡という暗示を作ったのだろうか。ひとりぼっちの寂しさに心が壊れないよう、強気で自信家な自分を演出する眼鏡という暗示を。
 でも、それは――とても悲しいことだとナンは思った。
「ご主人、この子も一緒に連れていけへんやろか? なんか、うち……」
 今まで黙って話を聞いていた千夏が懇願するように瞳を向けてくる。
「千夏……」
 千夏の表情はミフィの内情を表すかのように、悲しみに揺れていた。
 そしてその表情が、ナンの記憶の片隅をかすかに刺激した。
(私……前にもどこかで……)
 どこかは分からない。しかし、どこかでナンは千夏にこんな表情を向けられた気がする。
 そのとき自分はどうしたのだろうか?
『私と行こう』
 脳裏に響いたのは、ナノマシンで見せられた追憶の声。
(そう、私は千夏に手を差し伸べたんだ)
「ねぇ、ミフィ」
 自分が何を言おうとしているのか、ナンは内心で驚いていた。冒険者として生きているナンの日常は危険に満ち溢れている。そんな中に、こんな幼い子を連れて行こうというのか。
『大丈夫、貴方は私が守る』
 かつてのナンの言葉が今のナンの背中を押してくれる。
「私と一緒に」
『でも、結局お前は誰も守れなかった』
「っ!」
 それは誰の声か。低く冷たい男の声。
だがそれはナンの言葉を途絶えさせるには十分で。
「ん? 私と、何だ?」
「…………ううん、なんでもない」
 力なく首を振るナンを、千夏は今にも泣きそうな瞳で見つめるのだった。
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