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『星降る夜に、花束を』 第1話 「なくしもの」 その11

 役所には騎士団に誘導されて避難してきた人たちが大勢いた。
 再会を喜ぶ者、突然の不幸に怒りや嘆きを叫ぶ者。軽症を負っている者は多かったが、死傷者は出ていないようで、そのことにナンとミフィは安堵の息を吐いた。
 市長に連れてきた人々を任せ、ナンは再び役所の外へと出た。ウメボアはすべて討伐されたらしく、今は騎士団が慌しく消火作業に当たっていた。
 その光景を眺めながら、ミフィはぽつりと呟いた。
「お姉ちゃん……どうしてウメボアは町を襲ったのかな?」
「……え?」
「だって、彼らは本来大人しい子たちなんだよ? 確かに縄張りに入ってきた人間は攻撃するけど、決して縄張りの外で人に危害を加えようとするような子たちじゃなかったのに」
 そう言われればそうだ。何故、ウメボアは町を襲ったのか?
「…………あの子たち、みんな怒ってるみたいだったね」
「そう、ね。言われてみればそんな気がする」
 彼らは何かに怒っていた。では何に?
 ウメボアの特性。縄張り意識が強い。そして子供を――
「……っ!?」
 炎の中から一頭のウメボアが姿を現す。
(まだ残っていた!?)
 慌てて短刀を構えようとするナンを、ミフィは両手を広げて制した。
「待って! 何か様子がおかしいよ!」
 ウメボアは相当弱っているらしく、おぼつかない足取りで鼻を動かしている。匂いを嗅いでいるのだろうか?
 やがてウメボアが弱々しい声で鳴く。その声に答えるように瓦礫の中から小さな返事が返ってきた。
「まさか……」
 ウメボアはなんとか瓦礫をどかそうとするが、弱った身体では瓦礫を動かすことさえままならない様子だった。
 ナンはミフィと互いに顔を見合わせ頷き合うと、瓦礫の元へと走った。
 火はついておらず、重たい瓦礫をナンが。小さな瓦礫をミフィが必死で取り外していく。
 やがて瓦礫の下敷きになっていたと思われるウメボアのウリボーが姿を見せた。
 瓦礫と瓦礫の間に挟まっていたらしく、ウリボーに大きな怪我はないようだが、煙を吸ったのか弱っている様子だった。
 ウメボアはウリボーに顔をこすりつけると、そのままイーストダンジョンの方へと歩いていく。その後ろをウリボーがひょこひょことついて歩く。
「……まさか子供を捜しに?」
「……うん。それに気付いた? あのウリボー、首輪がされていたわ」
「……え?」
「誰かがあのウリボーをペットにしようとダンジョンから連れ出したのかもしれないわ」
「じゃあ、あのウメボアたちは自分たちの子供を捜しに……町へ?」
 恐らくそれが真相なのだろう。誰がウリボーを連れ出したのか。その人物こそがこの災害の元凶だ。
「でもこれでミフィの無実は証明出来るね」
「…………うん」
 しかしミフィの表情は暗い。確かにあれほどの敵意にさらされたのだ。ミフィの心に根付いた恐怖はそう簡単に拭い去れるものではないのかもしれない。
「さて、私も騎士団の人を手伝ってくるわ」
「あ、私もっ」
「ダメ。まだ危ないからミフィは自分の屋敷へ戻ってなさい」
「………でも」
「あなたに怪我をして欲しくないの。ね、分かって?」
「…………うん」
 ミフィはとぼとぼと、自分の屋敷の方へと歩いていった。
 そしてナンは騎士団の仕事を手伝った。瓦礫をどかし、一箇所にまとめていく。
 途中から町の男手たちもやって来て、仕事に加わった。
 女たちは無事だった食材で炊き出しを行い、逃げ出した家畜を連れ戻していく。
 そして、
「おい、あれっ!」
 誰かが丘の上を指差して叫んだ。その指差した先を見ると、そこには丘を駆け降りてくる五体のブリキングが。そしてそれらの後ろを歩く少女の姿。
「ミフィ!」
 ナンは驚きの声を上げる。
「私も、お手伝いさせてください」
 みんなのところへやって来たミフィはブリキングを背後に従えて、大きく頭を下げた。
「な、何をいまさらっ!」
「大体、この事件もあんたが引き起こしたんじゃないのかい!?」
 向けられる敵意と罵声に、しかしミフィは頭を下げた姿勢のまま、拳をぐっと握り締め、こみ上げてくる恐怖と戦っていた。
「ちょ、ちょっと待って! みんな! これは――」
 見るに見かねて、ナンがこの事件の真相を話す。
 町の人はみな半信半疑だったが、やがて一人の子供が泣きながら手を上げた。
「……ウリボーを連れ出したのは、ぼ、僕……」
 それはミフィに石を投げつけた男の子だった。
 男の子の告白に、町の大人たちは互いに顔を見合わせ、気まずそうにミフィから視線を外した。
 子供の親が必死に頭を下げて謝罪している。その横で子供はわんわんと泣き、大人たちはどうしたものかと対処に困っていた。
「もう泣かないで? 確かに君のしたことはいけないことだったわ。だから、みんなに謝らないと。それに死んじゃった沢山のウメボアにも。ね?」
 ミフィは泣いている男の子をぎゅっと抱きしめ、あやすようにその背中を優しくさすった。
「う、うん……ごめんなさいっ! ごめん、なさ、いっ」
 泣きながら、何度も何度も謝る男の子の姿に、大人たちはやがて苦笑を漏らし始めた。
 そしてミフィを詰った夫婦がおずおずとミフィの前にやって来ると、深々と頭を下げた。
「その、勝手なことばかり言って悪かったっ。許してくれ!」
「ひどいこと言って、ごめんなさい……」
 突然の謝罪に、ミフィはあたふたと手を振った。
「あ、そ、その、頭を上げてくださいっ。え、えっと、その私は平気ですから!」
 それでも何度も謝罪を繰り返す夫婦に、しまいにはミフィまでぺこぺこと頭を下げ始め――
 その光景に、周りにいた大人たちの表情がかすかに緩んだ。
「まぁ、誰も大きな怪我はしちゃいないみたいだし」
「壊れたものはまた作ればいいものね」
「子供の悪戯だと思えば、こんなのは、な?」
 やがて大人たちは活気よく、町の復興作業を再開し始めた。
「おう、嬢ちゃん! その機械、何が出来るんだ?」
 やがて大工らしい男性がミフィの背後に控えているブリキングを指差して言った。
「あ、えっと、瓦礫の除去と、消火と、あと――」
 ミフィは指折りでブリキングの性能を語り、そして指示を出していく。
 ブリキングはあちこちに散らばり、復興作業を手伝い始めた。
「あ、お嬢ちゃん! こっちに来て、炊き出しの手伝いをしてくんないかねぇ」
「あ、はい! 今行きますっ」
 主婦の一人に呼ばれ、ミフィは慌てて主婦たちの下へと向かう。
 そんな光景を見て、ナンは薄く微笑みを浮かべた。
「ご主人……」
「ミフィ、良かったね。これでもう大丈夫よね」
「これが俗に言う、雨降って地固まるって言う奴やね」
 横に浮かぶ千夏と笑みを交し合い、ナンもまた復興作業へと戻っていった。
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