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『星降る夜に、花束を』 第2話 「恋獄」 その5

 高台を降りると、既に周囲は白いもやに覆われており、周囲の様子を見渡すことも出来ないほどになっていた。
 あちこちから状況を確認する冒険者たちの声が聞こえてくる。
「ご主人……」
「分かってる。みんな、はぐれないで固まって行動してっ」
 周囲に呼びかけ、ナンはカイトやミシャとこの後のことについて話し合うことにした。
「それで、これからどうしよう?」
「俺達の目的はこの霧の発生の原因解明と霧の中に蠢く何かを駆逐することだ」
 カイトの言葉に、ナンは昼間に会ったタイタニアの女性の言葉を思い出した。
「昼間の女性の話が本当だとすれば、この湖のどこかにベーリック号が出現しているのよね? 私はそれが怪しいと思うわ」
「あんなのは口から出任せか、狂言に決まってるさ」
「でもぉ、手がかりはそれぐらいしかないのですしぃ、とりあえずは湖周辺を移動しながら、船を捜してみるというのはどうでしょうかぁ?」
 ミシャの言葉にカイトは渋い顔をしながら頷いた。
 と、そこで周囲に集まっていた冒険者たちがゆっくりと移動を開始し始めた。
 ナンたちの会話を聞いていたというわけではないが、どうやら調査隊はウテナ湖沿岸に沿って移動するようだった。
「昼間の女性もぉ、ここにいるんでしょうかぁ?」
 ナンたちもその集団に混じり、周囲を警戒しながら歩を進めた。
「こうも視界が悪いと、モンスターが近づいてきても分からないわね」
「そこは俺達自身の経験でカバーするしかないさ」
「うーーん」
 と、そこでミシャが難しい顔をしていることにナンは気付いた。
「ミシャ、どうしたの?」
「いえ~、探査魔法を飛ばそうとしたんですけど、なんかこの霧、魔力が含まれているようで魔法が上手く機能しないんですよぅ」
「魔力が含まれた霧?」
 霧というのは水分を含んだ大気が冷やされることにより、水滴化したもののことを言う。その霧に魔力が含まれているとミシャは言ったのだ。
「やっぱりこの霧は自然のものじゃないってことね」
 そうなるとやはり話に出てくる船影が怪しくなってくる。それがベーリック号か否かは別としても、その船影がこの怪異の鍵を握っているのは間違いないだろう。
 既に調査隊は湖の四分の一を回っていた。
 しかしいまだに船影はおろか、怪しい人影さえも見つからない。
 周囲を視認出来ない状態での移動というのは大きな精神的疲労を与えてくる。敵がどこにいて、自分たちにどんな危険が迫っているのか。冒険者達は目に見えない敵と戦いながら、次第に披露の色を濃くしていった。
「ご主人……うち、ちょっとだけ湖の方を見てくるわ」
「ダメ。危険すぎるわ」
「いや、でも、うち霊体やし……」
「それでもダメ。千夏を危ない目に遭わせたくないのよ」
「大丈夫やって! 少し見てくるだけやから!」
「あ、千夏!」
 ナンの静止の声も聞かず、千夏は湖の方へとふらふらと飛んでいった。
「おい、さっきから何をぶつぶつ言ってるんだ?」
 前を歩いていたカイトが振り返り、胡乱な視線を向けてくる。
「な、何でもないわ……」
 ナンは頭を振りながら、千夏が無茶をしないように心の中で祈りを捧げた。


 ナンと別れた千夏はまっすぐにある地点へと向かっていた。
 それは湖ではなく、調査隊のルートから大きく離れたところにある丘の上だった。
(この感覚……うち、知ってる)
 千夏の心、いや魂が何かに引き寄せられるかのように共鳴している。
 丘の上にやってきた千夏は周囲をぐるりと見回した。
 周囲は相変わらず霧に覆い隠されているが、それでも沿岸部分ほどに深くはない。ヴェールがかかったかのような視界の中、千夏は必死に目を凝らす。
 そして丘から湖沿岸を、いや調査隊を見下ろす一人の少女の姿を発見する。純白の法衣に真紅の袴。そして黒曜石のように光沢を放つ漆黒の長い髪には、異国の花をあしらった簪。調査隊を見下ろす彼女の瞳からは一切の感情が読み取れず、まるで精緻な人形を見ているかのような錯覚さえ感じさせる。
「あ、ああ……」
 千夏は自分の見ているものが信じられないというように唇を震わせた。
 その声に反応してか、少女の視線がふっと千夏へと向けられる。しかしそれは通常ではあり得ないことだった。
 ネコマタはその魂と共存する者にしか姿を見ることが出来ない。だから千夏の存在を知覚出来るのはナンただ一人。そのはずだった。
 しかし目の前の少女は確かに千夏を視認していた。その視線はまっすぐ千夏へ向けられ、
「貴女は誰?」
 そしてそっと口を開いた。
少女は自分の胸に手を当てると、すっと目を閉じた。そして何かを思い出すかのように、そのまま小さく項垂れた。
「貴女からはとても懐かしい感じがするわ、幽霊さん。どこかで私とお会いしましたか?」
 千夏は言葉を発するのも忘れ、ぎこちなく首を振って答えた。
「そう……不思議ね。なんだか貴女を見ていると、ずっと長い間一緒にいたような、そんな感覚になってしまうんです。ふふふ、おかしいですね」
 そう言って小さく微笑む少女に、千夏は唇をかみ締めてこみ上げてくる激情と言葉を無理やり押さえ込んだ。
「誰と話しているんだ?」
 と、そこへ別の声が割り込んできた。
 いつの間にか少女の背後には白髪の青年が佇んでいた。右目を眼帯で覆ったその青年は少女の視線の先を目で追うが、しかし千夏の存在を知覚することが出来ず、訝しげに眉をひそめていた。
「そろそろアレが現れる」
「ええ」
 青年の言葉に頷き、少女は最後にもう一度千夏へと視線を向けると、
「ここはもうすぐ危険な戦場になるわ。怪我をしないように、湖には近づかないでね、幽霊さん」
そう言い残し、青年と共に丘を降りていった。
 一人残された千夏は遠ざかっていく少女の背中を見つめたまま、掠れた声でそっと呟いた。
「ふぶき、ちゃん……」
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